ミャンマー、飲料市場の展望

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ミャンマー、飲料市場の展望

ミャンマーでは2011年、現在のティン・セイン大統領の就任後、急速に民政化が進行し、また、先進諸国(特にアメリカ)の経済制裁の緩和により、世界中の国々のミャンマーへの関心が高まっている。いままで、ミャンマーへの外国企業の進出は圧倒的に中国、タイ、シンガポール勢が優勢であったが、他の先進諸国および日本企業のミャンマー参入の可能性はあるのだろうか?まずは製縫産業、ゼネコンなどのインフラ、続いて自動車・電機など、ミャンマーの安い労働力をあてにした日本企業が進出していく可能性は大きい。では日本企業の飲料企業の進出はどうか?現在5000万人余と目される人口も今後、急増し、2020年には1億人規模に達すると言われている。この潜在巨大マーケットに日本の飲料企業進出の可能性はあるのだろうか?今回はミャンマー最大の商業都市ヤンゴン市近郊に約1年半前、操業したコカ・コーラ2工場と大手ペットボトルミネラルウオーター企業のサン・パー・オー(SamParOo)の取材を通じてその可能性を探ってみた。

ミャンマー経済について
ここ数年GDP伸び率が7%という高い経済成長率を誇っているミャンマーだが、他のASEAN諸国と同様、貧富の差が激しい。また、古くから中国人がミャンマー財界の陰と陽、さまざまな部門で深くかかわっており、翡翠の密輸やヤミ経済など統計には表れていない部分も多い。ミャンマーは多民族国家であり、ビルマ族(約6割)をはじめとして、カレン族、カチン族など8つを超える民族から成り立っている。なかでも少数民族のカチン族は翡翠の売買で得た巨額の資本を元にミャンマー経済に大きな影響力をもっている。商業にとって大切な部分である物流については、未だに北部地域や東部地域での民族紛争のため、道路工事の進捗が遅れており、頻繁な停電とともにミャンマー経済伸展の足かせとなっている。特に東部地域では民族紛争のため大動脈道路(東西経済回廊)の工事がしばし妨害され、工事の進行が遅れている。ベトナム⇔タイ⇔ミャンマーの物流網の整備はこの国の大きな課題である。
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ミャンマー飲料市場と販売チャネル
飲用に必要な水を住居周辺の井戸・川・池・水道などから得ている農民や都市部の庶民とそれ以外の富裕層などの二極化が進んでいる。前者はペットボトルミネラルウオーター(600ml)で1本160チャット、日本円で17.5円(1円=8.57チャット)の購入もままならない一方、観光やビジネスで訪れている外国人や中産階級以上のミャンマー国民の間ではコカ・コーラをはじめとする炭酸飲料の伸びが著しい。現にアサヒ飲料社はマレーシア起源の現地企業ロイホイ社(LoiHein社)の炭酸飲料部門に50%の出資を行い、炭酸飲料にフォーカスしたビジネスで飛躍を狙っている。

ミャンマーにおける今後の飲料ビジネス動向
今後の日本の飲料会社がミャンマーに参入を想定した場合の分析を行う。
●3C分析(Customer、Competitor、Company)

〇ミャンマーの飲料市場(Customer)
人口については最新の統計で5142万人。国民の平均年齢は26歳と大変若い。ワーカーの平均月給は130,000チャット(15,170円、JETRO資料より)でカンボジア、ラオスなどと並んで他のAsean諸国(インドネシア、タイなど)に比べ低位である。飲料販売の形態はトラディショナルトレード(いわゆる街頭常温売り)が主体である。
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〇ミャンマーの飲料メーカー(Competitor)
国境を接する北の中国、東のタイ、南は海上輸送によるシンガポールからと、ほとんどの飲料が外国からの輸入である。2011年のクリントン国務長官、2012年のオバマ大統領のミャンマー訪問時の経済制裁緩和によりコカ・コーラが外資としていち早くミャンマー国内に飲料工場を建設した。

Soft Drink War
http://www.mizzima.com/opinion/features/item/10909-soft-drinks-war/10909-soft-drinks-war
コカ・コーラとペプシの2大ブランドのミャンマーにおける飲料戦争に対抗して宣戦布告をしているのがロイホイ社(Loi Hein社)CEOのフテュム(Sai Sam Htum)氏である。
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フテュム氏は1992年にデュア(Duya)というブランドでたばこ会社を設立後、1996年に飲料に参入。以後、オソツパ社(Osotspa社)と提携し、“Shark”エナジードリンク(バンコク発祥)やミャンマーで最大のミネラルウオーターブランドの“Alpine”で飛躍的に成長してきた。フテュム氏は自社のBlueMountainブランドのコーラでコカ・コーラ、ペプシにSoftDrinkWarをしかけている。
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〇日本の飲料メーカーの新規参入の可能性(Company)
通貨の価値の違いが大きく(チャット対円)、廉価品のミネラルウオーターでの利益確保は到底、難しい。人口の急激な伸びや経済発展に伴う国民所得の増加が予測されるものの、すでに市場に流通している中国産、タイ産、シンガポール産との競合に打ち勝つのは難しいと感じた。また、国内のインフラ、特に道路網の整備は進んでおらず、ヤンゴンといった大都市と南部地域(マンドレーなど)を含めた他の地域との物流に関しても、近年中にはその整備は難しい状況にある。
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以下、飲料工場見学の記録
●ヤンゴン市内、コカ・コーラ ピンヤ工場(Pinya Beverages Myanmar Ltd)
ピンヤ工場と称する工場は2箇所にありそれぞれが16km程度、離れている。1つはコカ・コーラのリターナブルびん2列を保有する工場(第1工場)と2つめは330ml缶1列と600mlペットボトル3列を保有する(第2工場)。特にペットボトルフィラー(Sidel社製)は巨大なフィラーでバルブ数が200超?もあり、大量生産によりコスト低減をはかっている。これらフィラーは日本では道路と交通法上の問題があり、とても運搬できない大きさである。インタビューに応じてくれた営業部長のAung Win氏の話では、炭酸飲料の伸びは著しく年間では15%以上の伸びを示していており、特にペットボトルのコカ・コーラの伸びが著しいとのこと。コカ・コーラは通常のスーパーマーケットでは330mlアルミ缶で420チャット(日本円で49.0円)、425mlペットボトルで300チャット(35.0円)で販売されている。一方、タイから輸入されているペプシコーラは450mlで300チャット(35.0円)で両者は市場で激しい競争を繰り広げている。まだ、欧米ほど飲料における炭酸や砂糖に対するネガな反応はなく、今後も炭酸飲料はミャンマー市場で最も成長が見込まれる。

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ヤンゴン市スーパーマーケット棚
コカ・コーラPinya工場受付



●サン・パー・オー社(SamPar Oo社)

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カンパニーロゴ


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フィラー(Newamster)http://www.newamstar.com/en/cp5.htm


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ペットボトル手動式ブロー成形機



サン・パー・オー社はハウング・オー氏が現在、CEO(Haung Haung Oo氏)であり、もともと飲料容器製造販売から開始した会社である。現在もペットボトルミネラルウオーターを製造する傍ら、ハスキー(カナダ)社製の射出成形機と中国製の手動式ブロー成形機を40台以上も所持して、自社および他社向けのペットボトルを人海戦術で生産している。ミャンマーにおけるミネラウウオーター市場は「SamParOo」の他、先述のロイホイ社の「Alpine」、タイからの輸入である「Life」、RO膜&UV殺菌の「Bio」など、競争が激化している。
インタビューに応じてくれたCEOのハウング・オー氏も、「安値競争に突入しているミネラルウオーターで利益を上げるのはすでに困難であり、リンゴ・オレンジなどの果汁飲料、エナジードリンクへの参入をすでに準備している」とのこと。

JETRO訪問インタビュー
ヤンゴン市内に事務所をもつJETROを訪問し、日本人駐在員にミャンマーにおける日本の企業進出の可能性につきインタビューした。要点は
① 長く続いた軍事政権から解放された国も国民も、主として人口ボーナスによる可能性を強く感じている。
② 経済特別地区のひとつであるティラワ地区(ヤンゴン市中心部から北へ約28km)では現在、土木工事(五洋建設)が進行しており、日本地区(396ha)で日本企業の操業が開始されるのは2016年初めになるであろう。

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ティラワ経済特区



④ 将来に対する期待が少し過度に進行しており、ヤンゴン市内などは外国企業の進出を契機に土地バブルが発生しており、ヤンゴン中心部で東京都港区並のオフィス賃料になっている地域もある。
⑤ 経済の進展に伴う法令の制定やルールづくりが後手にまわっており、外国企業の許認可に対しても該当する法律が無かったり、行政担当官の一存でものが決定され、担当官ごとのばらつきがとても大きい。とにかくやってみないとわからない(コストや納期がどれくらいかかるのかわからない)といった状態である。
⑥ 賄賂習慣は相変わらず、横行している。
⑦ 国民は仏教徒であり、街の治安もすこぶる良い。日本人のビジネスパートナーとしてのミャンマー人は大変仕事のやりやすい民族である。
現地ガイド、ミョータンさんと松田世界遺産シュダゴンパゴダで(ヤンゴン)

今回の感想
人口増と安価な労働力による将来の経済発展に大きな魅力を感じる国家ではあるが、ミャンマーを取り巻く周辺の国々から物資や製品の流入は古来からあり、日本飲料メーカーの新規参入には厳しいものを感じた。単に安価な労働力や経済成長をあてにするだけでは、この国での成功は望めないと思う。一方でロイホイ社CEOのヒュット氏のしかけるSoftDrinkWarで市場は活性化しており、今後もアサヒ・ロイホイ社の炭酸飲料の動向を注視していきたい。

(飲料ビジネスコンサルタント&通訳 株式会社ティーベイインターナショナル 代表取締役 松田晃一)